第5話 「夢のクリーム」
自分のものは自分で手入れするのが当たり前ではないか!
第一私はそんなためにパリから派遣されたわけではない。」
とカンカンに起こっているのは、丸の内某有名ブランドショップのフランス人男性。
販売員がこんな口を聞くことはまず無いのがわが日本。
さぞかしお客さんは驚いたことだろう。
しかし、販売員の話は筋が通っている。
修理のようなアフターサービスはやるが、買上げ商品の手入れを要求するのは”自分の顔”を他人に洗ってくれよと頼むようなもの。
私は、ヨーロッパ人の個人主義というか、合理性を垣間見た気がした。
これが日本の店だったらどうか。
何しろ数十万もするバッグである。
ご無理ごもっとも、と上客のもてなしに、これ努めたのではあるまいか。
こういう、けじめの無さが訳のわからない返品問題につながったりするのでは・・・・・。
さて、話を戻して冒頭のブランドショップ。
今回は手入れの話題です。
日本人の習性というか、この種のお客さんは後を断たないようです。
そこで、同店の女性販売員が勧めているのが当社のデリケートクリームである。
そこのショップはパリの本社から取り寄せていたのだが、私どもが輸入販売していた関係で取引が始った。
最初の納品のとき、例のフランス人は「デリケートクリームは良い。もったいないから、靴などには使うな。」
と忠告してくれたのでした。
気持ちはうれしいが、靴などというのはどうも引っかかりますね。
彼がベタほめしているデリケートクリームという商品名お聞きになったことありますか。
トロッとした、ゼリー状の中性クリーム。
最大の特長は”起毛皮革以外の皮革にはほとんど使用できるということ。
普通の銀付きはもちろん、アニリン革、ナッパ革といったデリケートな素材でもシミにならないのです。
その他ピッグスキン、ヌメ革、合皮まで広くカバーする。
身の回りの皮革製品から家具まで使えるとあって、日本でも指名買いが増えてきた。
ここで、特長をまとめておくと
?シミを作らずに保革し、ツヤを保つ。
?皮革に浸透して湿気、水分から守る。
?衣服についても汚さない。
?油、溶剤など靴クリーム特有のニオイがない。
?サラッとしてベトつかない。
ついでに紹介しておきたいのがキャップに描かれている向かい獅子のマーク。
英国王室御用達品(当時)として、絶大の信頼を得ていることがお分かりになるだろう。