スエードシャンプーのお話

革靴を洗う、と言えば「エッ!そんなこと出来るのですか?」
はじめて聞いた方は皆びっくりして同じような返事が返ってきます。
それもその筈です。

“洗う”と言えば洗濯のように丸洗いを想像しているから
です。
「イイエ、靴の表面を洗うんですョ」と言い直すことも
しばしばありますが、それでも驚きます。
何しろ靴は濡らしてはいけないと信じ込まされています
から。
では「何故濡らしてはいけないのでしょうか?」と意地悪く逆質問をして
みますと、突然のことに「ウム・・・」と考え込んでしまい答えられなかったり、
「・・・靴が・・・傷む・・・」などなど漠然とした返事をする人が意外に多い
ことに気付きます。
「シミになる」「硬くなる」「革が伸びる(縮む)」「色落ちする」などの答え
が返ってくる人は少なく、4~50人集まった時、まとめ上げてようやく
辿りつくという有様です。

雨に濡れれば当然このようなことは起こりえるのですが対処の仕方が判らない。
どこへ行っても誰に尋ねてもみんな知らない。
これでは泣き寝入りするしかありません。
「だから水は大敵」なんだとはじめて靴を買ったその日から靴販売店をはじめ
家族や友達、同僚など、周囲から言われ続けてくれれば“革はコワ~イもの”
というイメージが脳裏に焼きついてしまうのも当然ですね。
中でも濡れて一番怖いのは雨染みです。
しかし革でも布でも同じことですが「染み」が生じるのは部分的に濡れたとき
だけです。
全部濡れれば乾いたところとの接点が無くなり“輪ジミ”という現象は
起きません。
このことをしっかりインプットしておいて下さい。

さて、今回はスエード靴を洗うレシピをご紹介
しましょう。
薄い色のスエードやヌバックの靴は汗や雨染み、
その他の汚れが特に目立つものです。
擦っても拭いてもきれいにならない靴は洗うことにより
美しさが蘇ってくるものです。
用意していただくものは、
1.バケツ(水)
2.M.モゥブレィ・スエードシャンプー
3.クリーニングスポンジ
4.タオル
です。

まず、最初は、泥や汚れをブラッシングして落とした靴を、水を含ませた
スポンジで湿らせてください。
この時、靴全体を拭くように余すところなく湿らすことがポイントです。
次にスエードシャンプーをスポンジで十分泡立ててから、手早く擦り始めて
ください。
汚れのひどいところは念入りにして全体を洗い終えますと、汚れとシャンプーが
靴の表面に残っていますので、今度はきれいな水で固く絞ったタオルを使い、
汚れを丹念にぬぐい取って下さい。
この時汚れはタオルに付着しますので「落ちたかナ~」と確認できます。
濃い色の靴は色落ちしますが、スエード用の補色剤があれば問題ありません。

そして、拭き終わったら風通しの良い場所に陰干しします。
夏場では20分くらいで乾きますがその様子をはやる心を抑えながら眺めて
いると濡れて黒かった靴は次第に明るく変化してゆきます。
シミは消えすっきりした革肌の美しさはまさに風呂上りの感じで身も心も
洗われたような気持ちになります。
それがまた次の靴に思いをめぐらせる結果となり、ついにはのめり込んで
ゆくのです。

特にヌバックにおいてはなおさらです。
乾くとアッパーは少し硬くなりますがこれは毛羽同士がくっつくからです。
スエードブラシで毛を起こせば元に戻ります。
最後にM.モゥブレィ スエードカラーフレッシュをスプレーすれば完了です。
「スエードやヌバックは手入れが面倒だから・・・」 「むずかしいから・・・」
とおっしゃる方、ツルツルしたスムースレザーより毛羽立っている方が
表面にキズがつきにくく、補色も楽です。
雨染みだって落ち易いのです。靴を洗ってみることにより、シューケアに対する
展望が急速に広がっていきます。
さすが、革先進国ヨーロッパですね。
スエードシャンプー万歳!

 

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