アビー・レザースティックのお話
「革靴が雨に濡れて、表面が波打ってしまいました。」
「コードバンの表面が雨でシミになってしまった。」
「革についた凹みを直したい。」
「レザーソールをきれいに仕上げたい。」
「コバの革が荒れてしまっているので元のようにならないか?」
お客様からの上記の問合せに一見共通点は無いように感じられます。
しかし、ある道具を使用すれば、いずれのケースも手直しすることが可能なのです。
ある道具とは?それは、形が棒状で、素材は水牛の角(つの)製の
「アビー・レザースティック」という商品です。
今回はこの謎の棒(?)「アビー・レザースティック」についてお話をいたします。
上記の5つに共通していえることは、皮革の表面が荒れていたり、凹凸ができて
表面がフラットではないということです。
そのことを理解すれば行うべき作業は明白です。
簡単に言えば、表面の荒れやデコボコを潰し、平らにすれば良いのです。
一般的に天然皮革はソフトで繊細なイメージがあるため、
力を加えて潰すという発想はほとんどありません。
しかし、実際には皮革を潰すということが必要な場合が、上記の様に多々あります。
ここで皮革を潰して補修をするケースや方法を紹介しましょう。
まず、革が雨に濡れて表面が波打っているケースですが、これは「塩吹き(または塩浮き)」
と呼ばれています。
雨などで靴が濡れた時は、皮革の内部に溜まった汗などの成分が、革の外側に出ようとします。
その際に、塩が外に出ることができずに、革の内部に残ってしまう時に起こる現象が塩浮きです。
次に、コードバンは革そのものに銀面がありません。
革の繊維組織(スエードのような毛の状態を)を潰して表面をスムース革のような状態にしていますので、雨に濡れると表面の繊維がゆるみ、
ふやけたような状態で、シミとして残ってしまいます。
いずれも革に水分が入って表面が緩んだり、ゆがんだりする時に起こる現象なので、
逆に水分などを加えて、硬いもので再度潰していけば元の状態に戻ります。
このような場合に使用するのが、アビー・レザースティックなのです。
この一見ピストルの弾のような形の水牛の角は、滑らかなアール(曲線)がついた形状です。
その曲線を利用して革靴の曲面にそってスティックを当てて、丁寧に擦り潰していきます。
水牛の角の表面はツルっと滑る仕上りになっていて、革を効率的にやさしく潰すことが
できるのです。
その他、皮革に付いてしまった凹みは、デリケートクリームを塗りこんで、
皮革の繊維を緩めた後に、スティックで表面を平らにします。
さらに、レザーソールに関しては、ソールモイスチャライザーを使ってケアする際に、
仕上げとして使用します。ソールモイスチャライザーで革底を保革した後、
アビースティックに布を巻きつけて力を入れて磨きこんでいきます。
この作業で緩んでいるレザーソールの繊維がしまり、表面もしっとりと滑らかに仕上ります。
コバも同様にウエルトクリームを塗りこんだ後に、布で巻いたスティックで力強く、
コバに光沢感が出るまで磨き込めば、新品のような雰囲気がでてきます。
こんな革靴用の“魔法の杖”「アビー・レザースティック」を使えば、誰もが
天然皮革のもつ回復力と耐久性に驚き、あらためて天然革のとりこになること請け合いです。
シューケアの新たなる発見を求めて、是非、お手入れ用品の仲間に加えてみて下さい。
今回ご紹介した商品
【アビィ・レザースティック】
関連リンク
【コードヴァンのお手入れ方法】
【レザーソール(革底)のお手入れ方法】
アビー・レザースティックのお話に関連する記事
- アンクルブーツ用キーパーのお話
- プロ・ゴートブラシのお話
- リッチデリケートクリームのお話
- アニリンカーフクリームのお話
- カラーの靴クリームのお話
- クリーナーのお話
- クリームナチュラーレのお話
- コンビトリートメントのお話し
- サドルソープのお話
- スエードクリーナーのお話
- スエードシャンプーのお話
- ステインリムーバーのお話
- ストレッチスプレーのお話
- チューブ入りクリームのお話
- デリケートクリームのお話
- ヒノキドライのお話
- ヒマラヤワックスのお話
- ビーワックスのお話
- ミンクオイルのお話
- モールドクリーナーのお話
- レザーローションのお話
- ワイヤーブラシのお話
- 油性ワックスのお話
- 無色のクリームのお話
- 防水スプレーのお話(前編)
- 靴クリームのお話