レザータンパッドのお話
“レザータンパッド”という商品をご存じでしょうか?
“シュータン”とは日本語に直訳すると靴の舌の意味、
つまり靴の甲部分のベロのことを指します。
その名の通り、靴の甲部のベロ部分に貼るパッドのことをいいますが、
どのように使うかわかりにくいため、どんなものなのかという
お問い合わせの多い商品でもあります。
そこで今回は“レザータンパッド”についてお話いたします。
レザータンパッドとの出会いは、およそ17~8年前。
サンフランシスコへ旅行に行った際、偶然オールデン(ALDEN)の
路面店を見つけて入りました。
最初は買うつもりは無かったのですが、見ているうちにだんだん欲しくなり、
店員さんに勧められてコードバンのローファーを試し履きすることになりました。
フィッティングしてみるとサイズはほぼOK。
しかしそれ以上に小さいサイズでは縦寸が合いません。
自分の足の甲部が標準よりも低いためにそこだけが妙にゆるい。
その時に店員さんに勧められたのがレザータンパッドでした。
当時、日本ではレザータンパッドの扱いがほとんど無かったので興味本位に
「なぜハーフインソールを下に敷かずに、甲の部分につけるの?」と尋ねたところ、
「甲が低い足に合わせる場合、下に中敷きを引いて持ち上げるより上の空間を埋めたほうが、
合理的でフィット感が良いから。」とのこと。
そのような接客方法はあまり聞いたことがなかったので、少々カルチャーショックをうけました。
オールデンのローファーを購入後、街の靴屋さんやリペアショップをのぞいてみると
多くの店でレザータンパッドが売られていて、アメリカではスタンダードな
フィッティング方法のようでした。
後にドイツのインソール工場で担当者に聞いたところ、アメリカには良く出荷するが、
ヨーロッパ等はそれほどでもないということがわかりフィッティングにも
お国柄があるということがわかりました。
偶然ではありますが、そんな縁もあってその後、当社でも扱うことになり
日本の市場に紹介することになったのです。
日本ではそれほど一般的に知られていない為、ご存じ無い方も多いと思いますので、
レザータンパッドを使うケースをご紹介します。
一つ目は内羽根式の靴等の紐を締めた際に、完全にそれが閉じてしまう場合。
二つ目が甲部のベロ部分が当って痛い場合。
三つ目はスリッポンシューズ等のサイズ調節です。
初めの合わせ目が閉じてしまう時に使用するケースですが、これは靴を履いて
紐を結んだ時に甲の合わせ目がやや開いていた方がきれいだからです。
閉じてしまっている場合にレザータンパッドを使用するときれいに合わせ目が開きます。
また靴が新品の頃はちょうど良くても履きこんでいくと徐々に靴底が
沈みゆるくなってきますので甲が閉じてしまうことがあります。
そんな時はレザータンパッドを装着して甲の合わせ目がきれいに開くように調整します。
また、二つ目のベロ部分が当って痛い時ですが、サイズが小さくて痛い場合は
甲高用ストレッチャーを使用して伸ばします。レザータンパッドを使うケースは
縫い目などが当って痛い場合にクッション代わりに使います。
そして最後はスリッポン等のサイズ調節ですが、これは前述したように足の甲が低い人が
その空いた隙間を埋めるために使います。
また、履きこんだ靴で中靴底が自分の足に合った状態で沈み込んだ場合などは、
足に合った沈み方をしているのでレザータンパッドで甲部分を埋めたほうが、
足裏のフィット感覚を変えずにサイズを調節することができます。
このように靴を履いた時の美しさ、痛み、サイズ調整までできるのがレザータンパッドです。
もちろん紳士靴だけではなく女性のパンプス等にもご使用頂けます。
少々大げさな言い方になりますが、今までの靴のサイズ調節の概念を変える商品と言っても
過言ではありません。
靴のつま先、甲を調整する機会がありましたら是非トライしてみて下さい。