塩浮き靴のお話
毎年この時期に多いお問い合わせが
「雨で靴にシミができてしまいました・・・。」
「靴に白い粉が吹いてしまったのですが・・なんとかなりませんか。」など
雨に濡れた後のトラブルに関してのものです。
特に、消費者の方々にとってやっかいなものが、雨に濡れた後に出てくる
「白い粉」「白い結晶」・・・つまり、塩浮きです。
そこで今回は靴の塩浮きについてお話いたします。
一般的に「靴に水は大敵」というイメージが定着していますが、その理由の一つが、
今回のテーマの「塩浮き」です。
靴が雨に濡れた翌朝、靴の表面に白い粉が噴き出している現象です。
雨に濡れた靴はバリバリに硬化して白い粉も中々落ちそうにありません。
ではこの靴の表面にでてきた白い結晶の正体は何なのでしょうか?
実はこの白い結晶の正体は塩(塩分)です。なぜ靴に塩が・・・!?
と思われる方も多いかもしれませんが、靴は歩行時に足から出る大量の
汗を革に吸収します。
個人差はありますが、一日履くとおよそコップ半分から一杯分の汗が足から
でるともいわれています。
その位、大量の汗(塩分)が履き込んだ靴には溜まっているのです。
そんな状態で雨に濡れてしまうと、革の内部に残留した塩分が染み込んだ雨と
一緒に表面に噴き出します。
また、新品の靴でも塩浮きすることがあります。
この原因としては皮革を製造する際の「なめし」の工程で、原皮が腐らないように
塩漬けされていることにあります。工程の中で皮は十二分に洗浄されますが、
塩を100%完全に抜くことは困難だからです。
したがって、新品の靴が塩浮きしたからといっても不良品ということではありません。
革靴という特性上、新品であっても、履き込んだものであっても、いずれある程度の
塩浮きはするものです。
大切なことは、塩浮きした場合でもその対処方法をきちんと把握しておくことなのです。
そして、その原因さえはっきりしていれば対処法は難しくありません。
単純に水を革に浸透させて、革の内部にたまった塩分を外に出してあげれば良いのです。
あまり良い例えではありませんが、漬け過ぎて塩辛い漬物を食べられるようにするために、
水に浸して塩を抜くのと同じような原理だと思っていただければわかりやすいかもしれません。
ちなみに、靴クリームや一般的なチューブの汚れ落とし(中性クリーナー)を塩浮き靴に
塗っても塩分はほとんど取れません。
塩は水に溶けますので効果があるのはやはり「水」ということになります。
水を使った対処法として、長年履き続けた靴、何度も繰り返し大量の塩が噴き出す
重症的な靴などを水が入ったバケツなどに浸して塩を抜く荒療治があります。
しかし、これは一般ユーザーの方には少々難易度が高いのであまりお勧めできません。
やはり最も効果が高い正攻法としてお勧めなのがサドルソープを使った革靴の水洗いなのです。
定期的に洗うことで塩浮きの予防にもなります。
また、M.モゥブレィ・ステインリムーバーは一般的な靴用クリーナーとは異なる性質の“水性タイプ”
ですので、デイリーのケアで使用していると、こちらもある程度の予防効果が得られます。
結論をいえば、革靴が塩浮きするのは当たり前。でも、サドルソープやステインリムーバーで
予防や除去ができる。「革に水は大敵」というネガティブな思考は捨て「革と水は切っても
切れない関係」つまり、水とうまく付き合うことで革靴の寿命は延びるということになりますので、
やはり“水性が最良!”というオチで今回もまとめさせて頂きます。