靴ひも(シューレース)のお話
「靴の穴の数はいくつですか?・・・それでは、75cmのヒモですね。」
靴売場で日常的にかわされているお客様とのやりとりです。
一般的に靴ひもは、消耗品として認識されていて、
価格もそれほど高くないせいか、あまりスポットを浴びる商品ではありません。
しかし靴ひもは、足と靴を一体化させて歩行を安定させる役目があり、
また結び方や色、材質などによって表情が劇的にかわる、
靴にとって大事なパーツの一つです。
そこで今回は靴紐(クツヒモ・シューレース)についてのお話をいたします。
まず、靴紐の種類ですが、タイプ別ではビジネスシューズ、スニーカー、
アウトドアシューズなど数種類あります。
その中でも、ビジネスシューズの紐は、ロウ引き紐(蝋引き・ロー引き)と
ガス紐に大別されます。
当社で扱っているロウ引き紐は、「綿糸」で織った紐を染色して
最後に表面にロウを塗りつけて乾燥させて作っています。
表面がロウでコーティングされているので、強度の良さが特長です。
その反面で、ロウが引き立ての紐は、少し滑りやすくほどけやすいのですが、
使いこむうちに馴染んできます。
豆知識になりますが、関東地方のロウ引き紐はロウをしっとりとさせて、
結んだ時にしんなりとするように仕上げ、関西地方は、紐が強調されるように、
ロウをたくさんつけて結んだ時にピンと立つような仕上がりを好みます。
もう一方のガス紐は、ロウ引きが綿糸を使用しているのに対して、
「絹糸」を織り込んで作ります。
昔はこの糸でワイシャツの生地を織っていたように
高級感の点ではこちらに軍配が上がります。
ちなみにガスを漢字で書くと「瓦斯」となります。
あまり見慣れない漢字だと思いますが、いわゆる燃料のガスのことです。
では何故この絹の紐をガス紐というのでしょうか?
それはガス紐の加工方法に由来します。
簡単に言うと、絹糸で織った紐をガスの炎の中に高速度で通して、
表面の毛羽(けば)を焼きとることで、紐に光沢感を出して、
より滑らかに仕上げるためにガスの炎を使っているからなのです。
そして、ガス紐の特長は高級感や、結んだ時の絡みの良さがある点ですが、
弱点はロウ引きに比べて耐久性に劣るということです。
お客様からも時々「どちらの紐がおススメですか?」という
ご質問を頂きますが、どちらの紐にも優れた点、劣る点がありますので、
ロウ引きの“耐久性”か、ガス紐の“高級感と結びやすさ”
どちらを選択するかで好みが分かれるところです。
そんな中で、当社で耐久性に優れ、ほどけにくく、高級感がある、
三拍子そろった靴紐の取り扱いをしております。
「紗乃織靴紐(さのはたくつひも)」のロウ引き紐です。
編み込んだ綿の紐に、職人が独自でブレンドしたロウや
油脂を丁寧に馴染ませています。
一般的には、ロウを紐に塗り込むと、乾燥した後にロウの白い結晶や
べた付き感が残りますが、紗乃織靴紐は白い結晶等が残らずに、
適度なしっとり感で結束部を強固にします。
熟練の職人の技術とノウハウが品質を高め、逸品と言われる
ロウ引きヒモを完成させたのです。
耐久性も良く、先端のセルも金属セルを使用していますので、
普通のプラのセルよりも長持ちします。
また、この紐は、靴のディテールまでこだわりぬいた
雰囲気をかもし出しファッション性を向上させます。
是非、靴紐という靴の細部までこだわり抜いて、
紐靴の素晴らしさを堪能して下さい。