靴クリームのお話
皆さんはお客様からこんな質問を受けたことはありませんか。
今回は靴クリームの中で最もポピュラーな乳化性クリーム(ビン入り)と油性クリーム(缶入り)について、正体はいったい何なのかをご説明しましょう。
昔、英国ではバッグの保護のためにロウを塗っていたと言われています。
しかし、ロウは水をはじくが革が硬くなりひび割れが生じる。
そこで、次は保革のために油を加えた・・・・・これが油性クリームのはじまりです。
それでもまだ、ひび割れは止まらない。
そうだ!革には水分が必要なんだ・・・・・ということに気づき油性クリームに水を加えることを考えついた。
こうして乳化性クリームが誕生したと言うわけです。
では、乳化性クリームについて少々知ったかぶりをしてみましょう。
大まかな成分内容は油と水とロウです。
「エッ?水と油は混ざらないのでは?」その通りです。
でも、混ざった状態を作り出すのは容易です。わかりやすく説明しましょう。
ここに家庭でよく使っている1/3ドレッシングがあるとします。
水より比重の軽い3分の1の油は水(実際には酢や調味料も)の上に分離して浮いていますね。
ガシャガシャと振れば油は細かい粒上になり水の中に飛散し、混ざった状態になりますが、振るのを止めるとすぐ元に戻ります。
次に、乳化剤(界面活性剤・・・台所の食器用洗剤の主成分)というものを加えて振ってみる。
すると、前と同じ様に混ざった状態になります。
しかし、今度は振りを止めても元に戻ることはなく混じり合った状態で安定します。
この状態を「乳化」と呼び水の中に油が散っていることから「水中油型(O・W)」と呼ばれています。
多くの乳化性クリームはこのタイプです。
食品にも色々ありますが、マヨネーズを想像して下さい。
固くなりそうな靴クリームに水を加えてかき混ぜれば、混じり合って柔らかくなるのもこのタイプです。
これに対して仮に3分の1が水であったら振ったときはまったく正反対になり油の中に水が飛散して混ざります。
これを「油中水型(W・O)」と呼ばれ、マーガリンがこのタイプです。
(靴クリームでいうとコルドヌリアングレーズのビーワックスがこのタイプです。)
このように、乳化性クリームは「水」が入っていることが大きな特長です。
靴の手入れには最も理想的なクリームと言えます。
では、油性クリーム(缶入り)の正体は何か・・・・・?
ロウに油を溶かし込んだ単純なものです。
しかし単純なものほど難しいと言われますが、各メーカーは独特な成分を加え差別化に苦労しています。
油性ワックスの1ブランド独占状態の市場はきっとこんな事情があるからでしょう。
でも、ロウの固まりです。
こればかり使用していると光沢はでますが靴に栄養・水分が補充されず、また、通気性も無くなり靴はひび割れをおこします。
冒頭の「ビンと缶はどちらが良いのでしょうか?」という質問にもどりますが、
「栄養を与えると言う意味で、絶対に欠かすことのできない乳化性クリームをベースにして、
より強い防水力とツヤが欲しいとき、また、雨の降りそうな日などには油性クリームを併用するのが理想です。」
但し、ビン入りと缶入りはあくまで用途が違います。(同じだと思っている消費者がほとんどですが)
「用途の違うものを単純に比較することはできない。」というのがR&Dのスタンスです。
【M.モゥブレイ・シュークリームジャー】
【WOLY・シュークリームビン】
【コルドヌリアングレーズ・ビーワックスクリーム】
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