アンティーク仕上げのお話
そんな古き良き時代のアンティーク人気の影響か、靴の世界では新品にもかかわらず、
アンティーク仕上げ(フィニッシュ)を売りにしたり、購入したばかりの靴を
アンティーク風にしたいのでやり方を教えてくださいという方も増えてきました。
今回はそんな靴のアンティーク仕上げについてお話いたします。
靴のアンティーク仕上げといってもその方法は多種多様です。
まず、原皮の時からアンティーク風に染めた革を使用しているケースをご紹介します。
これはガラス仕上げ革の一種で茶色などに染色した皮革の上からさらに黒などの違う色で塗装を施した後に、機械で表面を少しバフ(研磨)してムラを出すやり方です。
これは完全にガラス加工革と同じです。購入後にどんな色の靴クリームを塗っても表面的に変化は起こりませんので、お手入れはM.モゥブレィ クリームエッセンシャル一本でOKです。
但し、アンティーク仕上げにも靴の完成後、表面的に塗装をかけているものがあります。
これらはピカピカのガラス加工の上に色をのせてあるだけなので定着力が弱く、
クリーナーやクリームで磨いただけで色が落ちてしまうものもありますので注意が必要です。
そして一般的に靴を購入後に自宅でできるアンティーク仕上げの方法をご紹介します。
まず代表的なものは薄い茶色などの靴のステッチ(糸)部分を濃い茶色や黒の靴クリーム
で染めてトーンを出す方法です。
のっぺりした感じの靴に陰影ができて重厚な雰囲気の靴に仕上がります。
以前は靴の専門店で入荷した靴を一足一足丁寧にステッチ染めしている光景を見ることも
ありましたが、最近は少なくなったようです。
とても簡単にできるのでおススメですが、一度染めてしまったステッチは元にもどりません。
また、ステッチではなく薄い色の皮革そのものに濃い色の靴クリームを塗り込んで
アンティーク感を出す方法もあります。
乳化性クリームは、違う色のクリームを使用したからといって着色する力はありません。
しかし、皮革表面のシボにクリームが入り込んでトーンが変わりますので、全体的あるいは
部分的に靴クリームを塗り込んで薄汚れた感じを出し、皮革に陰影をつけることができます。
これは傷ついている靴に行うことで傷を目立たなくする効果もあります。
薄い色の靴の話ばかりしてきましたので、今度は黒やダークブラウンなどの濃い色の
アンティーク仕上げについてご紹介します。
陰影をつけるという意味でシンプルなのはハイシャイン(鏡面磨き)です。
つま先やカカト部分の芯が入っている部分に油性ワックスで鏡のように光らせることで
トーンをつけるおなじみの手法です。
さらにハイシャインでの新しい提案は靴の羽根部分にもワックスをかけることです。
羽根部分がキラリと光り美しさがさりげなく引き立ちます。
また黒の靴にネイビーブルーやレッドの靴クリーム、茶色の靴にイエローなどの
靴クリームを塗ることで、陽の光の下で黒や茶色でも色彩が鮮やかになりトーンが出ます。
このように同色のクリームを使用するのではなく、時には赤、青、黄色など原色を使用して
遊ぶことで、あなたの靴にオリジナリティがあふれます。
画伯になったつもりで、キャンバスに絵を描く要領で靴の色遊びをお楽しみ下さい。