靴用スノーチェーンのお話
靴業界でも北海道などでは、雪道専用シューズが売場の大半を占めるほど店頭に
ぎっしりと並びます。
そんな中でここ数年、靴売場や雑貨店で「冬の定番品」にのし上がった商品が
あります。
「雪」「靴」という言葉で想像がつく方も多いと思いますが、”靴用スノー
チェーン”がその正体なのです。
今回はそんな”靴用スノーチェーン”についてのお話をしたいと思います。
当社が靴用スノーチェーンを最初に輸入したのは1980年代初めのころです。
靴用のスノーチェーンをはじめて見たのはスイスのスーパーマーケットでした。
もちろん日本では全く見たことのない商品でしたので驚きとおかしさが混じった
ような微妙な衝撃でした。
すぐに買って雪上で使用したところ、その面白さと機能性に大満足でとても
気に入り、その後日本に輸入して販売がスタートしたのです。
当時はもちろん靴用スノーチェーンなど誰も知りません。
「雪」=「北海道」というイメージで、札幌市内の小売店にご紹介してみた
ところ
「そんなの靴に付けたらかっこ悪くて歩けないよ!」
「こっちの人は転ばないから必要なし!」
など散々な結果に終わり、それならと東京の売場で真剣にご紹介しても
失笑される始末でした。
なんとか店頭に並べてもらっても、興味本位で見ていただくだけでほとんど
売れず、あげくの果てにはテレビのバラエティ番組で面白グッズとして
紹介されるなど、その地位は大変低い製品でした。
それでも靴用スノーチェーンという珍しさと、品質の高さ
も手伝って、いくつかの雑誌に紹介され、地方から
わざわざ東京の百貨店まで買いに来てくれるお客様も
いました。
その後、幸か不幸か、ある年に東京で大雪が降り、転倒で
多数のけが人がでるという出来事があったのです。
テレビのニュース番組で当社の靴用チェーンが紹介
されて、あっという間に品切れになった頃から、認知度も
かなり高まり類似商品も出てきました。
当社で当初から取扱いをしているのは「トップストップ」というドイツ製の靴用
スノーチェーンです。
この製品はドイツの車用チェーン等を製造しているチェーンメーカーのルッド社
製で、スベリを止める原理は車のチェーンと同じです。
ちなみに凍結道で靴が滑りやすいというのは、凍結道に靴が接地すると、
その熱などで表面の氷や雪が溶け出して、水の層ができます。
その水の上に靴が乗っかってしまうので滑ってしまう訳です。
車の(※注)ハイドロプレーニング現象に似た理屈だと思って下さい。
「トップストップ」は鎖の一つ一つに凸状の突起が付いていて、氷本体に
しっかりとグリップするので、それこそ氷に踏み込んでいるような感覚です。
数年前に当社の社員旅行で真冬の北海道に行った時には、もちろん全員が
トップストップを付けて行動しました。
同じツアーの他のお客様が何度も転倒しているのを尻目に、なんと私たちは
全速力で走っていました(笑)。
装着も簡単で、持ち運びもコンパクトに収まり便利です。
数年前には、週刊誌の特集で「雪道の転倒防止グッズは有効か?氷上、雪上で
実験!」という各社自慢の靴用スノーチェーンが集った”氷上タイム
トライアル”や”装着感”などを比較した記事が掲載されたことがあります。
多くのライバル製品を跳ね除け、当社の「トップストップ」が堂々の一位に
なった時は、長年の努力(?)が実った感もあり涙したものです。
(ちょっと大げさですかね。)
様々な経緯がありましたが、靴用スノーチェーンという存在が日本でもかなり
一般に認知され、様々なチェーンが沢山発売されて一つのカテゴリーに成長した
ことは、R&Dとして業界の流れをつくる一石を投じたという意味で誇りに
思っています。
こんな涙ぐましい商品的な歴史を知って頂ければ、真冬にR&Dスタッフが
「大雪降らないかなぁ~」と願ってしまう理由が、「トップストップの在庫を
さばきたいという気持ちだけではなく、雪道で多くの方にトップストップを
試して頂きたい」との気持ちであることがご理解いただけましたかネ!?
(注)ハイドロプレーニング現象・・・高速で車が走行中に、道路上にある雨や水の上にタイヤが浮いた状態になり操作不能になる現象のこと
※「トップストップ」を装着時でも雪道、氷上歩行の際は、転倒防止などに細心の注意を払い、気をつけて歩行してください。
また本文中に雪道などを走行といった内容が記載されていますが、危険ですので決して氷上や雪道などでは走ったりしないで下さい。
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