ペネトレィトブラシのお話

 「クリームを塗る時は布を使えば良いのですよねぇ?」
 「いいえ、布よりもこちらのブラシの方がはるかに便利ですよ!」
これはR&Dセールスプロモーションで頻繁に交わされる問答の一部です。

当ページの靴用品情報下記の「シューズブラシのお話」で様々な靴ブラシの話を
しましたが、多数の役割のブラシの中から今回はクリームを塗る際に使用する
小さな「塗布用ブラシ」に大きくスポットを当ててお話いたします。

まず冒頭の質問に関して一般論で言えば、乳化性クリームは布で塗る人が圧倒的
に多いと思います。
特に近年ではクリームを塗った後のブラッシングをする人さえ少なくなってきています。
クリームを塗るのにブラシを使う人が多いはずがありません。
しかし、R&Dが長年培ってきた経験から言えば、靴クリームを塗る際は
ハケタイプの小さなブラシを使用するのがベストです。

布よりブラシが優れている理由は
 1.ブラシの方がクリームを全体的にまんべんなく伸ばしやすい。
 (特に布の場合は最初にクリームを付けた場所に集中してクリームが入って
 しまう。)
 2.手を汚さずに効率的に作業ができる。
 3.コバの部分やメダリオン、革のシボ(シワ)など布では届かない部分まで
 クリームを塗り、詰らない様にかき出す事ができる。
 4.布にクリームを取ると布自身にクリームが吸収されてしまい適量を確実に
 塗ることができない
などが挙げられます。

ペネトレィトブラシのお話実際にソフトでキメの細かい皮革に無色のクリームを布で
塗ったりすると、一部分にしかクリームが行き渡らず、
また、シボの間にクリームが詰まった状態ができるので、
どことなく白っぽい状態になるケースがまれにあります。
これは布でクリームを塗ることによってできる典型的な現象
で、ブラシでクリームを塗り薄く全体に伸ばして、クリーム
が乾燥しないうちに大きいブラシで全体をブラッシング
すればこのようなことはまず起こりません。

またブラシの話題ではお約束の「ブラシで皮革が傷つきませんか?」の質問も
ご心配には及びません。
一般的な表革はそれほどヤワではありません。
もしどうしても心配な方は、不用な靴や目立たない部分でテストしてみれば安心
できるでしょう。
理論的にではありますがその役割と機能性が良く理解できればブラシが優って
いる理由が明白になります。

それではR&Dスタッフが実演でクリームを塗る瞬間に話を戻しましょう。
当社スタッフがクリームを塗るのに使用しているのは、一見すると床屋さんが
ヒゲ剃りに使うような形の「ペネトレィトブラシ」という小さな塗布用ブラシ
です。

クリームを米粒で3、4粒分程度ペネトレィトブラシに取り、靴に薄く広げて
いきます。
スピーディーにクリームを全体に広げながら、コバの部分もしっかりとクリーム
を塗りこむ要領で浸透させれば、ペネトレィトブラシの役目はここまでです。

あとはクリームが乾燥する前に大きなブラシでクリームをなじませ、さらに
広げながら光沢感を出します。
たったこれだけのことではありますが、布と比較をすればその効果、スピード、
仕上り感は段違いです。
ちなみにペネトレィト(Penetrate)とは英語で「浸透する」という意味
ですので、そんなイメージでご使用下さい。

最後はひとつだけ使用上の注意ですが、ペネトレィトブラシはクリームを毛先に
直接付けるため、何度か使用していると毛に残っているクリームが固まり、毛が
硬くなったりします。
そんな時はクリームを水で洗い落として下さい。乳化性クリームは固まっても
水に溶けますので、簡単に毛の柔らかさが戻ります。
(注:大きい仕上げ用の化繊毛または豚毛ブラシは水洗い不要です。)

こんな小さなブラシではありますが、使いこなすことで
「ブラシを極めればシューケアを制す。」
という大きな気持ちが生まれるでしょう。
そして、また一つシューケアのレベルが上がった自分が、この瞬間に確認できる
のであります・・・間違いない!

【ペネトレィトブラシ】


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